「櫻井さんは、山崎文栄堂の、何が一番好きですか?」
最初のZoomで、角川さんから投げかけられた問い。
その日、櫻井は、すぐには答えられませんでした。
けれど、その問いは、その後の私たちの対話の、真ん中にあり続けました。
まず、会社のことを
最初の数回のミーティングで、私たちは、山崎文栄堂という会社のことを、丁寧にお話ししていきました。
創業105年。大正時代に、東京で文具店として始まりました。
3代目の山崎登社長が、26歳で社長就任。
1995年から、アスクルの代理店として、東京西エリアのトップ販売店に。
現在、お取引させていただいているのは、45,000事業所。
年商63億4千万円。
従業員は、18名です。
数字だけを見ると、順調な会社に見えるかもしれません。
けれど、その数字の裏に、あまり語られてこなかった、社長の哲学がありました。
飛び込みも、テレアポも、やらない
山崎文栄堂は、この30年間、新規飛び込み営業もテレアポもやってきませんでした。
45,000事業所というお客様の数は、そのほとんどが、
紹介と、深いお付き合いから、増えていったものです。
実際、コロナ禍の2021年には、紹介経由で2,070事業所のお客様が増えました。
これは、業界的にも珍しいことでした。
「買わない提案」をする営業
社長が、社員によく話す言葉があります。
「必要ないものは、買わないでくださいと、ちゃんと言えるようになりなさい」
お客様の会社に伺って、備品の在庫を見せていただいて、
「これ、今は買わない方がいいですよ」と伝える。
本当に必要になったときに、また声をかけてくださいと、伝える。
それが、山崎文栄堂の営業の、日常の風景です。
売り上げを追いかけようと思えば、そんなことは言えません。
けれど、社長は、それを30年、貫いてきました。
売上の70%は、社会貢献の話
宮地が、ある日、こう話してくれました。
「訪問先で話すことの、70%は社会貢献の話。アスクルの話は、2%くらいですよ」
角川さんは、この言葉に、深く反応してくれました。
「それ、すごいことですよ。他の会社では、絶対にできないことです」
私たちにとっては、日常の当たり前でした。
けれど、外の方から見ると、これは相当に特殊なことだったのだと、初めて気づきました。
「動く1社のために、99社にも」
対話を重ねる中で、社長がふと、こんなふうに言ったことがありました。
「100社に営業に行っても、本気で動く会社は1社くらいですよ。でも、残りの99社が、私たちのことを覚えていてくれることが、大事なんです」
角川さんは、この言葉を、何度も繰り返し確認していました。
「動く1社のために、動かない99社にも、価値を残す」
後に、この考え方が、ファイリングの庭というメディアの、根っこの思想になっていきます。
社長の言葉たちが、宝物だった
対話を続けるうちに、角川さんは、こう教えてくれました。
「山崎文栄堂は、宝物のような言葉が、いっぱいある会社ですね」
半歩先。ありのまま。買わない提案。
お役立ち営業。社員が商品。並走する仲間。
社長が長年、社員に語ってきた言葉たち。
私たちの中では、当たり前になりすぎていて、外に向かって伝える機会もありませんでした。
これらの言葉を、どう外の方にお届けするか。
それが、私たちの、次の課題になっていきました。
執筆:山崎文栄堂 櫻井友子・宮地宏彰 / 編集:角川英治(株式会社フブキ)