45,000事業所と、社長の言葉たち - 庭が生まれるまで⑵ -

2026年07月19日配信

「櫻井さんは、山崎文栄堂の、何が一番好きですか?」

最初のZoomで、角川さんから投げかけられた問い。

その日、櫻井は、すぐには答えられませんでした。
けれど、その問いは、その後の私たちの対話の、真ん中にあり続けました。

まず、会社のことを

最初の数回のミーティングで、私たちは、山崎文栄堂という会社のことを、丁寧にお話ししていきました。

創業105年。大正時代に、東京で文具店として始まりました。
3代目の山崎登社長が、26歳で社長就任。
1995年から、アスクルの代理店として、東京西エリアのトップ販売店に。

現在、お取引させていただいているのは、45,000事業所。
年商63億4千万円。
従業員は、18名です。

数字だけを見ると、順調な会社に見えるかもしれません。

けれど、その数字の裏に、あまり語られてこなかった、社長の哲学がありました。

飛び込みも、テレアポも、やらない

山崎文栄堂は、この30年間、新規飛び込み営業もテレアポもやってきませんでした。

45,000事業所というお客様の数は、そのほとんどが、
紹介と、深いお付き合いから、増えていったものです。

実際、コロナ禍の2021年には、紹介経由で2,070事業所のお客様が増えました。

これは、業界的にも珍しいことでした。

「買わない提案」をする営業

社長が、社員によく話す言葉があります。

「必要ないものは、買わないでくださいと、ちゃんと言えるようになりなさい」

お客様の会社に伺って、備品の在庫を見せていただいて、
「これ、今は買わない方がいいですよ」と伝える。
本当に必要になったときに、また声をかけてくださいと、伝える。

それが、山崎文栄堂の営業の、日常の風景です。

売り上げを追いかけようと思えば、そんなことは言えません。
けれど、社長は、それを30年、貫いてきました。

売上の70%は、社会貢献の話

宮地が、ある日、こう話してくれました。

「訪問先で話すことの、70%は社会貢献の話。アスクルの話は、2%くらいですよ」

角川さんは、この言葉に、深く反応してくれました。

「それ、すごいことですよ。他の会社では、絶対にできないことです」

私たちにとっては、日常の当たり前でした。
けれど、外の方から見ると、これは相当に特殊なことだったのだと、初めて気づきました。

「動く1社のために、99社にも」

対話を重ねる中で、社長がふと、こんなふうに言ったことがありました。

「100社に営業に行っても、本気で動く会社は1社くらいですよ。でも、残りの99社が、私たちのことを覚えていてくれることが、大事なんです」

角川さんは、この言葉を、何度も繰り返し確認していました。

「動く1社のために、動かない99社にも、価値を残す」

後に、この考え方が、ファイリングの庭というメディアの、根っこの思想になっていきます。

社長の言葉たちが、宝物だった

対話を続けるうちに、角川さんは、こう教えてくれました。

「山崎文栄堂は、宝物のような言葉が、いっぱいある会社ですね」

半歩先。ありのまま。買わない提案。
お役立ち営業。社員が商品。並走する仲間。

社長が長年、社員に語ってきた言葉たち。
私たちの中では、当たり前になりすぎていて、外に向かって伝える機会もありませんでした。

これらの言葉を、どう外の方にお届けするか。

それが、私たちの、次の課題になっていきました。

執筆:山崎文栄堂 櫻井友子・宮地宏彰 / 編集:角川英治(株式会社フブキ)